コーネル大学日本流通プログラム
増山としかず事務所からのお知らせです。
日刊総合経済紙「フジサンケイビジネス
フジサンケイビジネスアイ様のご協力で当ホームページでも紹介いたします。
毎週水曜日に掲載されています。
フジサンケイビジネスアイは定期購読紙ですが、このほかに都内の一部
『甦れ!中小企業魂』第9号 (2017/08/02)
コーネル大学日本流通プログラム
実は私、昨年秋からコーネル大学と新日本スーパーマーケット協会が8年間続けている流通業のマネジメント・プログラムに参加しており、この7月、NY州イサカという学園都市にあるコーネル大学にて最終講義を受講してきました。
約一年間、最先端の教授陣と日本流通業の幹部の皆さんと共に、基礎から応用、最前線のビジネス、流通業界の抱える課題を大いに考え議論しながら、解決策を導き出す事を学んできました。
日本の流通(卸小売業)は、GNPの約12%を占め、製造業、サービス業に続く大きな存在であり、また従業員ベースで見ても、製造業と並ぶ最大の産業で約17%を占めています。しかし今、この産業は大きな課題と転機を迎えています。
第一の課題は、中小企業の比率が高く、利益率が低いこと。つまり生産性が低い。そして、本来商売の基本を学ぶもっとも理想的な業種にもかかわらず、若者はそこで働くことを敬遠し、実態以上に年々評価が下がってきています。
第二は、IT化によりこの業態そのものがなくなるのではないかという不安です。確かにアマゾンなどのバーチャル店舗の急速な普及によって、スーパーなどのリアル店舗の役割はますます難しいものになってきています。
そんな中、どうしたらスーパーの売上げが上がり、利益率が向上するのか。
地域にとって、なくてはならない存在となるにはどうしたらいいのかなど真剣に議論しました。多くの中小スーパーでは、今いろいろな試行錯誤をしています。イートインコーナーの充実、地場の産品を使った総菜コーナーの拡充、地場食材の料理教室、従業員が苦手とするレジの自動化、AIを使った在庫管理などなど。
また、外国人旅行者の取り組も真剣に行っています。共通して言えることは、不毛な安値競争を極力避けるには何をしたらいいのかということです。安値競争に明け暮れて、体力を消耗させ、結果倒産してしまい、消費者が車や電車で通い買い物に行かざるを得なくなると結果的にコストが高い買い物になってしまうのです。
これを避けるために、持続可能な経営をどう続けていくか、そこが知恵の出しどころです。
このプログラムで学び最も印象的であったのは、通貨の役割そしてその反射として流通業の役割です。通貨は、人々と欲望価値との差を埋めるために存在します。例えば、東洋と西洋の地理的差の中で存在した絹や胡椒取引き。これによって莫大な富を蓄積したイタリア商人などはその例の一つです。古今東西すべての流通業者は、何らかの欲望の差を埋めるべくモノを運んで富を蓄えたのです。通貨はその時々の手段であり、それ以上でも以下でもありません。
今、流通業だけではなく全ての日本の中小企業は、生産性の低下に苦しみ、IT関連の異業種からの参入の恐怖におののいています。そんな中、今一度自らのビジネスが、人々の欲望のどの部分の差異を均しているか、社会に貢献しているかという原点に返ってみると意外にその答えが見つかるケースが多いです。